SAPコンサルタントの将来性
ITコンサルティングの中でも、案件数が多いSAP関連プロジェクト。
ERP(Enterprise Resources Planning:統合基幹業務システム)の中でも世界シェアの高いSAP。日本国内のシェアも高く、SAPコンサルタントのニーズは高い状況が続いています。
すでにSAPに関わった経験のある人はもちろん、業務系システムコンサルティング経験がある方は、専門性を高めた「SAPコンサルタント」というキャリアパスもあります。とはいえSAPのシェア動向やSAP関連プロジェクト案件が今後増えていくかどうか。特に現在SAPでは、いわゆる「2025年問題」が話題となっています。2025年問題への対応についてまとめた記事はこちらです!
今回はSAPコンサルタントの将来性やニーズについてまとめてみました。
SAPコンサルタントの業務
SAPコンサルタントのメインとなる業務が、SAPの新規導入支援。会計や人事、在庫管理や販売管理など幅広く企業の経営システムに関わるSAPの場合、コンサルティング範囲も単なるITシステム開発ではなく、企業の経営全般に関わります。
<システム導入前>
企業の経営状況を把握した上で、現状の課題を把握。ITシステム導入とあわせて業務改革(業務改善)・経営改善に関する提案を行ないます。また働き方改革の一環として、業務効率化を目指すケースも増えています。
<システム導入>
プロジェクトマネージャーとして、開発~導入までを統括して管理。稼働後のアフターフォローを請け負うケースもあります。
SAPを導入する企業が増える中、導入支援だけではなく、導入後のSAPバージョンアップ対応や追加システム開発、他ITシステムとの連携などのコンサルティングを依頼されるケースもあります。またSAPの新規導入セミナーなども行なわれており、セミナーを利用して新たな知見を身につけているコンサルタントも少なくないようです。最近SAPが力を入れているのがAI技術。社内のさまざまな情報をデジタル化して活用できるのがERPの強みですが、AIの機械学習機能を使うことでさらに効率化できるアプリケーションも提供しています。こうしたアプリケーションをプロジェクトに組み込むケースも今後増加すると言えそうです。
SAPコンサルタントに必要なスキル・資格
SAPコンサルタントは、SAP製品に関する知識のほか、クライアントが属する業界の知識が必要なのは言うまでもありません。ただしそれだけではSAPコンサルタントして活躍できません。より上流の管理者として、経営全般の課題解決スキルと仕事量が求められるのがSAPコンサルタント。クライアントの要望を分析し、客観的なデータを使った改善提案力が必要です。
SAPコンサルタントになるためには、一般的にはコンサルティングファームでSAP導入案件の経験を重ねるというのが主流。またERP開発経験のあるエンジニアがコンサルタントへキャリアアップするケースもあります(ただしコンサルタントとして、開発経験が必須というわけではありません)。
最近ではエンジニアやコンサルタントという立場ではなく、導入企業のメンバーとしてSAPなどのERPシステムを導入・運用した経験がある人がコンサルタントに転身するというキャリアパスも出てきています。SAPモジュールコンサルタントとして、FI/CO/EC-CS/SD/MM/PPなどのモジュールの中から、強みを活かしてコンサルティング業務に従事しているケースも多いです。
SAPコンサルタントして活躍するには、認定コンサルタント資格は必須?
SAP社では認定コンサルタント資格を設けていますが、製品・バージョンごとに細かく分類されているのが特徴です。SAP公式サイトの「パートナー別SAP認定コンサルタント資格取得数」によれば、2019年9月時点で資格取得者は約13,300人となっています。(※1)
なお、認定資格を持たなくとも、コンサルティング業務そのものを行なうことは可能です。とはいえコンサルタントの求人募集時に、「SAP認定コンサルタント資格所有者のみ応募できる」という案件も中にはあります。また将来コンサルタントとして転職したり起業・独立したりすることを考えれば、資格は持っておくべきでしょう。なお認定コンサルタント資格を持っていると、名刺に資格名称を記載することが可能です。この資格を取得する難易度は高めと言われており、認定コンサルタント資格の価値は高いと言えます。
なお資格は一旦取得すれば更新の必要はありません。ただしバージョンや製品ごとに資格を取得する必要があります(実施中の認定資格試験一覧には、なんと100種類以上リストアップされています)。また試験を受けるには実際の試験会場で受けるほか、Web経由で試験を受ける方法も提供されています。
SAP認定コンサルタント資格を取得するには、仕事として実務経験を積むほか、SAP社が提供している有償トレーニングの研修を受講するという手段もあります。ただしトレーニングの研修を受講するには、およそ100万円というコストがかかります。(実際にトレーニングを受ける場合は、企業がサポートするケースがほとんどのようです)
SAP導入事例
SAPはすでに日本国内で多くの企業に導入されています。コンサルティング会社が公開している事例の中から、大企業の事例と中小企業の事例をそれぞれご紹介しましょう。
SAP HANA導入で基幹システムを刷新、アドオンを98%削減したカルビーの事例
長年大規模な基幹システムを使い続けている大企業にありがちなのが、業務やシステムの複雑化。菓子メーカーのカルビーでも、こうした悩みを抱えていたそうです。カルビーでは本社のほか国内にある工場など多くの拠点を持っており、従来SAPベースの基幹システムを利用していたものの標準化できていないというのが大きな課題でした。
そこで基幹システムの刷新を検討し、2016年にコンサルティング会社アクセンチュアが中心になり、SAP HANA導入プロジェクトを立ち上げました。カルビーが使っていた旧基幹システムでは、拠点ごとに異なる業務も多く多数のアドオンがある状況だったそうです。これでは業務の効率化につながらないだけではなく、メンテナンスコストもかさんでしまいます。そこで標準化・効率化を目指しSAP HANAを導入。業務の標準化とシンプル化を目指した結果、旧システムにあったアドオンの98%削減を実現しました。SAPコンサルタントにとっては、こうした多くの拠点がある企業の大規模プロジェクトに関われるというのもメリットのひとつと言えます。
参考:https://www.accenture.com/jp-ja/success-accenture-calbee-sap-hana
海外展開を目指し、SAPのクラウド型システムを導入したユーグレナの事例
一方でベンチャー企業や中小企業に対しては、SAPのクラウド型ERP導入を進めるプロジェクトも増えています。例えば日立システムズでは、環境問題に取り組む「株式会社ユーグレナ」のSAP導入コンサルティング事例を自社ホームページで紹介しています。東京大学発のバイオベンチャー企業であるユーグレナ社は2005年に設立後、2012年に東京証券取引所市場マザーズに上場しました。
IPO後は国内拠点の増加や海外展開を計画しており、クラウド基盤の基幹システム導入を検討。その結果「SAP Business One Cloud」の導入を決定しました。決め手はクラウドベースであることとあわせて、SAPが海外実績が豊富でローカライズしやすいという点だったそうです。なおユーグレナ社は「SAP Business One Cloud」を日本で導入した初めての企業です。海外に強いSAPだからこそ、コンサルタントして海外展開を狙う企業の成長をサポートできるというのもメリットかもしれません。
参考:https://www.hitachi-systems.com/ind/sap/case/euglena/index.html