Royal Greenland CIO:「独自AIを開発するのではなく、標準化されたAIを利用したい」

Royal Greenland Moves to SAP Cloud ERP and SAP BDC | SAP News Center

Learn how Royal Greenland is modernizing its ERP with SAP, simplifying operations and unlocking standardized, embedded AI.

1. 企業概要とDX推進の背景

Royal Greenland は、グリーンランド自治政府が100%所有する大手水産加工企業であり、北大西洋や北極海から鮮度の高い魚介類を世界中に供給している。40以上の工場・加工拠点を持ち、長年にわたりSAP基盤で業務を支えてきたが、急速なデジタル化の要請に対応するため、SAP ECCからクラウドERPへ大規模な移行プロジェクトを進めている。これにより、より標準化されたIT基盤とAI活用の可能性を確保しようとしている。

2. 基幹システムのモダナイゼーション

同社は、既存のオンプレミスSAP ECCからSAP Cloud ERPSAP Business Data Cloudへ移行することを決定した。このクラウド移行により、ITインフラや運用プロセスが統一され、データ活用の基盤が整備される。クラウドプラットフォーム上に標準化されたデータレイヤーを構築することで、分析やAI活用のスケールが大幅に向上することが期待されている。

3. “標準化されたAIの利用”への方針

Royal GreenlandのCIOである Lars Bo Hassinggaard は、AI戦略における方針として「自社でAIモデルを一から開発するのではなく、標準化されたAIを消費したい(consume)」という考え方を明確に述べている。これは、たとえ過去に独自のAI実験や画像認識プロジェクトを実施した経験があっても、今後はSAPがクラウドERPプラットフォーム上で提供する組み込みのAI機能や標準モデルを活用するという方針への転換を意味している。

この方針の背景には、独自AI開発が高度な専門知識・リソース・ガバナンス管理を必要とし、長期の運用負担やリスクを伴うという実務的な課題がある。標準AIを使うことで、複雑さと保守コストを抑えつつ、迅速な価値創出を目指す意図がある。

4. 標準AI利用のメリット

標準AIを消費する戦略は、以下のようなメリットをもたらす:

  • 導入の迅速化:カスタム開発ではなく標準機能を活用するため、実装・運用の立ち上げが速くなる。
  • 複雑性の削減:独自モデルの構築・管理・リスク制御の負担が軽減される。
  • ガバナンス・セキュリティの向上:SAPプラットフォームに組み込まれたAI機能はセキュリティや監査面での一貫した管理が可能。
  • 継続的な進化:SAP側で機能改善や最新AIの更新が提供されるため、利用側はインフラの進化を享受できる。

Royal Greenlandは、標準AIを財務や管理、業務プロセス最適化などの領域で段階的に活用する計画であり、初期段階ではプロセスの簡素化や品質向上、データ分析の自動化などに重点を置くとしている。

5. DX戦略としての位置付け

この方針は、単なる技術選択を超えた企業DX(デジタルトランスフォーメーション)の中核戦略と位置付けられている。クラウドERPへの移行と標準AI利用をセットで進めることで、データ基盤の一元化、業務プロセスの標準化、インサイトの迅速化を同時に実現し、組織の俊敏性と競争力を高める土台を構築する狙いである。

6. まとめと示唆

Royal GreenlandのCIOの発言は、企業がAI戦略を策定する際、次のような重要な示唆を与えている:

  • 単独でのAI発明よりも、信頼性のある標準AI機能を“消費する”方が効率的である
  • クラウドプラットフォームの選択はAI活用の速度と成果を左右する
  • 標準AIはガバナンスや運用負担の低減にも寄与する

このように、DXの現場では「AIを自前開発するのではなく、標準サービスとして取り入れる」戦略が、実務的かつ実行可能な選択肢として広まりつつある。