SAP S/4HANAオンプレミス向け互換パックの最終移行期間に関するSAPの発表
1. 発表の背景
SAPは、SAP S/4HANAオンプレミス環境における「互換パック(Compatibility Packs)」の最終移行期間を正式に発表した。互換パックは、SAP ECC(SAP ERP 6.0)時代の一部機能をS/4HANA上で一時的に利用可能とする仕組みであり、既存顧客が段階的にS/4HANAへ移行するための“橋渡し”として提供されてきた。しかし、S/4HANAの標準化・シンプル化を進めるSAPの戦略に基づき、これらの互換機能は恒久的なものではなく、廃止が前提とされている。
2. 互換パックとは何か
互換パックには、業界別機能や特定業務向けアドオン、従来のデータモデルに依存する機能などが含まれる。これらはS/4HANAの新しいデータ構造やアーキテクチャに最適化されておらず、移行初期の業務継続を目的に限定的に提供されてきた。そのため、長期的な利用は想定されておらず、SAPは顧客に対し標準機能や次世代ソリューションへの移行を促している。
3. 最終移行期間の内容
今回の発表では、SAP S/4HANAオンプレミスにおける互換パック利用の最終期限が明確化された。これにより、顧客は定められた移行期間内に、互換パックに依存する業務や機能を見直し、SAP S/4HANAの標準機能、もしくはSAPが提供する新たなソリューションへ移行する必要がある。期限以降は、互換パックはサポート対象外となり、システム運用上のリスクが高まる点に注意が必要である。
4. 顧客への影響と求められる対応
互換パックを利用している企業は、自社業務がどの機能に依存しているかを可視化し、影響分析を行うことが不可欠となる。単なる技術移行ではなく、業務プロセスの再設計や標準化が求められ、場合によってはアドオンの廃止や再開発も必要となる。この移行は負荷を伴う一方で、業務の簡素化や将来的なイノベーションの基盤を整える機会ともなる。
5. SAPの戦略的意図
SAPが互換パックの終了を明確にした背景には、S/4HANAを「デジタルコア」として最大限に活用してもらう狙いがある。標準化されたプロセスとリアルタイムデータに基づく業務運営を実現することで、AI、分析、クラウド連携といった先進技術を活用しやすくなる。互換パックからの脱却は、将来志向のERP活用への転換点と位置付けられている。
6. まとめ:今こそ計画的な移行を
今回の最終移行期間の発表は、SAP S/4HANAオンプレミスを利用する企業にとって重要なマイルストーンである。互換パックに依存した運用を続けるのではなく、早期に移行計画を策定し、業務改革と技術刷新を同時に進めることが、長期的な競争力強化につながる。SAPはこの移行を通じて、よりシンプルで俊敏なエンタープライズITの実現を支援している。

