SAPがOracleやSalesforceと戦い抜くための要素とは

今回はSAPが今後、事業展開していくうえで、競合になっているOracleや新興勢力として最も勢いのあるSalaesforceに対してどのように対抗していくのかについて紹介されている記事を見つけましたので、まとめていきたいと思います。

2020年12月6日 Cloud Wars掲載

インテリジェントエンタープライズとは

従来のERPを超えるという目標を果たしたSAPは、デジタル経済に対応した、一連の新しいエンドツーエンドのソリューションと機能により、SAPが提唱した”インテリジェントエンタープライズ”を2021年に実現します。

インテリジェントエンタープライズとは、従業員がより価値の高い成果に集中できるように人工知能 (AI)、機械学習 (ML)、モノのインターネット (IoT)、アナリティクスなどの最新テクノロジーを活用する企業のあり方です。
こちらのURLにSAPが提唱するインテリジェントエンタープライズの内容が記載されているのでご覧ください。

SAPの強み

急速に拡大するクラウド市場の製品に対して、SAPは2014年に買収したクラウド市場2位のコンカー(1位はSalesforce)と自社クラウドサービスであるSAP HANAとの統合を終えて、独自の改革を進めていった結果、何万社にも及ぶクライアントを獲得しています。

この記事の筆者はSAPとトップとして会社を牽引するクライン氏にとっては今が非常に重要な時期であると語っています。
SAPはこれまでの実績として、CX(カスタマーエクスペリエンス)とEX(エンプロイーエクスペリエンス)を中心として新しい領域への機能拡張を進めてきました。
さらにビジネスネットワークを定義づけ、機能拡張した末の膨大なソリューションポートフォリオのすべてを円滑に統合しています。

このパッケージにあるカテゴリー(サービス)の詳細さとデータ統合を可能にした在り方を武器にしたEtoE(エンドツーエンド)のサービス提供は大きな強みとなっています。
実際にSAPのソリューションポートフォリオをカテゴリーとして区分けしたものを参考程度に載せておきます。

SAPジャパンのHPに掲載されているカテゴリーまとめ
SAPジャパンのHPに掲載されているカテゴリーまとめ

SAPの今後の展望

世界で活躍するグローバルカンパニーがどのように運営しているのかについて最も詳しく知っているのはSAPであることは間違いありません。
そのためERPパッケージのクラウド移行という業界での変遷に加えて、SAPは以下の展望が見込めます。

  1. カスタマーエクスペリエンスの蓄積:ERPに蓄積されるデータやインサイトをもとにクライアントを多角的な側面から理解することができる
  2. ERPに蓄積されたデータをもとに実施するデータ分析
  3. 隣接する市場にいる企業や、自社の他市場へ参入しているビジネスを相互接続するビジネスネットワークの拡大
  4. 2018年に買収した調査会社Qualtricsの株式上場による利益
  5. その他の新しいデジタルサプライチェーン事業

SAPの今後の課題

クライン氏は2020年3月に就任しており、第3四半期の業績開示によって、時価総額300億ドルの損失を受けました。
その際にコメントとして以下のように語っております。
「SAPのCEOとして、私は持続可能な価値創造を最優先として動かなければならないと信じています。 したがって、お客様の成功とSAPの大幅な成長の可能性を、短期的なマージンと引き換えにしようとはしません。」

また競合と比較した際には、それぞれ浮き彫りになる課題があります。

OracleとSAPは詳細な業界ごとのソリューションを提供しており、SaaSモデルのソフトウェア業界では他社を並行して活用する必要のない、ワンストップのサービス提供を可能にしています。
そのため今後はEtoEサービス提供のさらなる詳細化が求められています。

SalesforceはSAPと比較した際、まだERPまたはHCMソリューションを提供しておりません。
今後はそうした領域を活かして、複数の方法でSalesforceには創り出せない価値提供をすることが必要になります。